作ったグッズを「売る」となると、自分用に作るときとは違う配慮が必要になります。
イベントで頒布する、通販サイトに出す、フリマアプリに並べる。どの形であっても、販売という行為には作る以上の責任がついてくる。
とはいえ、必要以上に身構えることもありません。押さえるべき点は決まっていて、順番に確認していけば整理できます。
この記事では、権利、表示、規約、品質の4つの観点から、販売前に確認したいことをまとめました。個別のケースについては、必要に応じて専門家や所轄の窓口に相談してください。
販売前に確認すべきことは何?
大きく4つ。「権利は問題ないか」「表示義務を満たしているか」「販売先の規約に反していないか」「品質・安全面は大丈夫か」です。
自分用に作るだけなら1つ目だけ考えれば済むことが多い。販売するとなると、残り3つも関わってきます。
自分用と販売用では線引きが変わる
著作権の世界には「私的使用のための複製」という考え方があります。自分や家族の範囲で楽しむために複製する行為には、一定の例外が認められています。
ただし販売や頒布は、この私的使用の範囲を明確に超えます。無料配布であっても、不特定多数に配る行為は同様です。
このあたりの詳細は自作グッズの著作権|推しの写真・SNS投稿・個人利用の注意点で解説しています。
「少しだけなら」は通用しない
数量が少ないから、利益が出ていないから、という理由で問題がなくなるわけではありません。規模の大小と、権利侵害にあたるかどうかは別の話です。
判断に迷うデザインは、作る前に確認しておくのが結局いちばん早いです。
無料配布も「頒布」にあたる
売らなければ大丈夫、と考える人は多いのですが、そうとは限りません。
不特定多数に配る行為は「頒布」として扱われます。ノベルティとして無料で配る、イベントで来場者に渡す。これらも私的使用の範囲ではありません。
対価を受け取っているかどうかより、誰に対して、どれだけの範囲に渡すかが判断の軸になります。社内のスタッフだけに配る場合と、来場者全員に配る場合では意味が違ってきます。
権利まわりで確認すべきことは?
著作権、商標権、肖像権・パブリシティ権の3つ。他人の権利を使っていないかを確認します。
著作権|イラスト・写真・フォント
他人が作ったイラストや写真をそのまま使うのは避けてください。ネットで拾った画像はもちろん、有料素材でも利用規約の範囲を確認する必要があります。
見落としやすいのがフォント。フォントには商用利用の可否や、グッズ化の可否が規約で定められているものがあります。無料フォントほど確認が必要です。
素材サイトの規約でも、「Webでの使用はOK、物理的なグッズへの印刷はNG」と分かれているケースがあります。同じ素材でも用途で条件が変わる、と覚えておいてください。
人に描いてもらったイラストも要注意。支払いをしたからといって、著作権が自動的に移るわけではありません。グッズ化して販売する予定があるなら、その旨を伝えて条件を決めておくべきです。
権利の基本的な考え方は文化庁の著作権ページで確認できます。
商標権|ブランド名・ロゴ・キャッチコピー
企業名やブランド名、ロゴマークは商標として登録されていることがあります。これらをデザインに使うと商標権の問題が生じます。
自分でブランド名を考えた場合も、すでに登録されていないか確認しておくと安心。活動が軌道に乗ってから名前を変えるのは大きな痛手になります。始める前に調べておくのが得策です。
登録状況は特許庁の商標制度のページから調べられます。同じ名前でも、区分が違えば併存している場合もあるため、自分が使う分野で確認してください。
肖像権|人物の写真
人物が写った写真をグッズにする場合、写っている人の許可が必要です。自分で撮影した写真でも、被写体の権利は別に存在します。
芸能人やアイドルの写真にはパブリシティ権も関わってきます。ファンとしての気持ちからでも、販売となると別問題です。
背景に写り込んだ人にも注意が必要。イベント会場で撮った写真をそのまま使うと、本人が意図しない形で他人の顔が世に出ることになります。
事業者として必要な表示義務は何?
継続的に販売する場合、事業者としての表示が求められることがあります。特に通販では確認が必要です。
通販での表示
インターネットで商品を販売する場合、事業者の氏名・住所・連絡先、販売価格、送料、支払い方法、引き渡し時期、返品の可否といった項目の表示が求められます。
対象になるかどうか、どこまで表示するかは販売形態や規模によって変わります。消費者庁や所轄の窓口で最新の要件を確認してください。
価格や品質の表示
「業界最安値」「日本一」といった表現は、根拠がなければ問題になります。品質についても、実際より著しく優れていると誤認させる表示は避けるべきです。
このあたりの考え方は消費者庁の景品表示法のページにまとまっています。
個人情報の扱いを決めておく
通販では、購入者の氏名・住所・連絡先を預かることになります。
伝票を捨てるときはシュレッダーにかける、名簿を作るなら管理方法を決めておく。扱う情報が増えるほど、管理の責任も増えます。
プラットフォームによっては、購入者の住所を出品者に開示しない匿名配送の仕組みがあります。個人で販売するなら、こうした仕組みを使うほうが負担は軽くなります。
販売プラットフォームの規約で何を確認する?
出品先ごとにルールが違います。法律上は問題なくても、規約で禁止されていることがあります。
二次創作の扱いはサイトによって違う
同人グッズや二次創作の扱いは、プラットフォームによって方針が分かれます。許容範囲を明記しているところもあれば、原則禁止としているところもある。
出品する前に、そのサイトのガイドラインを読んでおいてください。「他のサイトで大丈夫だったから」は通用しません。
権利者のガイドラインも確認する
作品によっては、権利者が二次創作のガイドラインを公開していることがあります。「グッズ化は不可」「販売は不可、無料配布のみ可」など、条件が示されている場合も。
公式が示している条件があるなら、それが最優先の判断基準になります。
ガイドラインは更新されることがあります。以前確認したときは大丈夫だった、が通用しない場合もあるので、作るたびに最新版を見るのが安全です。
数量の上限や、頒布できる場所を限定しているケースもあります。「イベント会場での対面頒布のみ可、通販は不可」といった条件は珍しくありません。読み飛ばさずに確認してください。
手数料と送料の設計
規約の話とは別に、実務として手数料の確認も必要です。販売手数料、決済手数料、振込手数料。これらを見落とすと想定より手元に残りません。
同じ商品でも、出品先によって手残りは変わります。手数料率だけでなく、振込のタイミングや最低振込額も確認しておいてください。売れてから入金までに1〜2か月かかる仕組みもあります。
原価と値付けの考え方はグッズの原価はいくら?にまとめました。
品質・安全面で気をつけるべきことは?
売ったあとにクレームにつながりやすいのが、耐久性と素材まわりです。事前の確認で防げます。
プリントの耐久性を確認しておく
購入者は当然、普通に使い、普通に洗います。「1回洗ったら剥がれた」となれば信用の問題になる。
サンプルを1つ作って、実際に洗ってみるのがいちばん確実です。加工方法によって耐久性は変わります。扱い方の注意点はプリントTシャツを長持ちさせる洗濯のコツを参考にしてください。
素材と取扱いの情報を伝える
アパレルなら素材とサイズ、洗濯時の注意。アクリルグッズなら鋭利な部分がないか。こうした情報を商品説明に書いておくと、購入後のトラブルが減ります。
サイズは「Mサイズ」とだけ書くのではなく、着丈・身幅の実寸を載せてください。ブランドによってMの大きさは違います。通販では実物を見られないぶん、数字の情報が信頼につながります。
写真の色味と実物の差にも触れておくと親切です。「モニター環境により色の見え方が異なる場合があります」の一文があるだけで、認識のずれを減らせます。
私たちのところにも「販売用なので、洗濯に強い方式にしたい」という相談が届きます。用途を最初に伝えてもらえると、適した加工を提案しやすいです。
小さな子どもが使うものは特に慎重に
対象年齢が低いグッズは、安全面の配慮が一段厳しくなります。
小さなパーツが外れないか、角が尖っていないか、口に入れられる大きさではないか。缶バッジの針やストラップの金具は、特に注意が必要な部分です。
配布先に子どもが含まれる可能性があるなら、形状と素材を先に相談しておくほうが安心。イベントの性質によっては、そもそも別のアイテムを選んだほうがいい場合もあります。
まとめ|4つの観点で順番に確認する
オリジナルグッズを販売するときは、権利・表示・規約・品質の4点を確認してください。
権利では著作権・商標権・肖像権。フォントの利用規約も忘れずに。表示は販売形態によって求められる内容が変わるので、所轄の情報を確認するのが確実です。
プラットフォームの規約と権利者のガイドラインは、法律とは別に存在します。公式が条件を示しているなら、それが最優先。
そして品質。サンプルを1つ作って洗ってみる。この一手間が、売ったあとのトラブルを防ぎます。
「販売用に作りたいけれど、この加工で大丈夫?」という段階でも構いません。お問い合わせの種別で「まずは情報収集がしたい」を選んでいただければ、用途に合わせてお答えします(2営業日以内に返信)。
加工方法ごとの特性と保有設備は対応可能加工に掲載しています。
