グッズを作ること自体は、それほど難しくありません。デザインを用意して、業者に発注すれば形になります。
本当に大変なのは、そのあと。商品が増え、色とサイズが増え、追加注文が来るようになってからです。
「最初の1品目はスムーズだったのに、10品目になったら回らなくなった」。この話を、私たちは本当によく聞きます。展示会でも、ブースで最初に出てくる話題がこれでした。
作る工程ではなく、その前後にある管理と手配。ここが読めていないと、事業が伸びたときに必ず詰まります。この記事では、実際に起きている運用課題と、その解き方を整理しました。
グッズ事業の負担は「作った後」に集中する
発注そのものにかかる時間は、全体のごく一部です。負担の大半は、仕様の確認、在庫の把握、追加手配、そして発送に費やされます。
発注より管理のほうが時間を取る
1品目だけなら、担当者の頭の中で全部管理できます。どの色が何枚あって、どの加工で作ったか。覚えていられる範囲です。
これが10品目、色違い3展開、サイズ4展開になった瞬間、管理すべき組み合わせは120通りになります。頭の中では処理しきれません。
そして厄介なのは、この増え方が売上と比例しないこと。品目が10倍になっても売上が10倍になるとは限りませんが、管理の手間は確実に10倍以上になります。
商品が増えるほど負担は掛け算で増える
アイテム数 × カラー × サイズ。この掛け算が運用負荷の正体です。
さらに、それぞれに「どの加工方法で作ったか」「版は残っているか」「前回いくらだったか」という情報が紐づきます。品目が増えるほど、確認すべき項目も増えていく。
本業の片手間では回らなくなる分岐点
グッズ事業を専任で見ている会社は、実はそれほど多くありません。広報の担当者が兼務していたり、営業の合間にやっていたり。
最初はそれで回ります。ただ、月に数回の追加注文が発生し始めると、片手間では厳しくなる。ここが最初の分岐点です。
厄介なのは、この負荷が数字に表れにくいこと。売上は伸びているので事業としては順調に見えますが、現場では本業の時間が削られている。誰かの残業で吸収されているうちは、問題として認識されません。
「グッズの担当を増やす」という判断は、なかなか下りにくいものです。だからこそ、増員ではなく仕組みで解く方向を先に検討したほうが現実的でしょう。
現場で起きている5つの運用課題
どの会社でも共通して出てくるのが、この5つです。
課題1・2 サイズとカラーの管理が複雑になる
「Lサイズだけ在庫が切れている」「黒は売れるが白が残る」。この状態を品目ごとに把握し続けるのは、想像以上に骨が折れます。
しかも売れ方は商品によって違う。同じサイズ展開でも、Tシャツとパーカーでは動くサイズが変わります。過去の実績が残っていないと、毎回勘で発注することになる。
課題3・4 追加注文のたびに仕様確認からやり直す
いちばん時間を奪われるのがここです。「前回と同じものを、あと50枚」という依頼が来たとき、その「前回と同じ」を再現するために何が必要か。
使ったボディのブランドと品番、色番、加工方法、プリント位置とサイズ、インクの色。これらが揃って初めて「同じもの」が作れます。
メールの履歴を遡り、過去の見積書を探し、担当者に電話で確認する。この作業が、追加注文のたびに発生します。
課題5 担当者しか分からない業務になる
そして最も深刻なのがこれ。仕様も経緯も担当者の記憶とメールボックスの中にしかない状態です。
担当者が異動・退職した瞬間、その商品は「二度と同じものが作れない商品」になります。実際、私たちのところにも「前任者が発注していた商品を、また作りたいのですが仕様が分かりません」という相談が届きます。
サンプルの実物が残っていれば、そこから起こし直すことはできます。ただ、それには時間も費用もかかる。本来は不要なコストです。
過去データが残らないと何が起きる?
同じ商品のはずなのに、ロットによって仕上がりが変わります。そして、その原因を特定できなくなります。
同じ商品なのに仕上がりが変わる
前回はもう少し濃い色だった。プリントの位置が少し下がっている気がする。こうした違和感は、比較する基準がないと確認のしようがありません。
版を作り直したのか、インクの調合が違ったのか、ボディのロットが変わったのか。記録が残っていなければ、原因の切り分けができない。
担当者交代で仕様が失われる
引き継ぎ資料に「Tシャツ 黒 100枚」としか書かれていない。これでは同じものは作れません。
必要なのは、品番レベル・色番レベルの記録です。「United Athle 5001-01 ブラック M/L/XL」まで書いてあって、初めて再現できる。
データを資産として残す考え方
一度作った商品の仕様は、次に活きる情報です。これを個人のメールではなく、組織の資産として残しておく。
BESTPLAY では自社のデータ管理システムで、過去の加工仕様を保管しています。「前回と同じで」の一言で通じる状態にしておくのが狙いです。再注文のたびに仕様を確認し合う往復が、まるごと不要になります。
加工方法の判断は誰がする?
発注する側が加工の専門知識を持つ必要はありません。ただし、判断材料を持っている相手を選ぶ必要はあります。
刺繍とプリント、どちらを選ぶか
同じロゴでも、刺繍にするかプリントにするかで印象も費用も変わります。
刺繍は立体感と高級感が出る一方、細い線や小さな文字は潰れます。プリントは細部まで再現できますが、質感は平面的。どちらが正解ということはなく、用途と予算で決まります。
企業のユニフォームやスタッフウェアなら、耐久性と見え方から刺繍が選ばれることが多い。一方、期間限定のイベントウェアなら、コストを抑えたプリントで十分な場合もあります。刺繍の種類ごとの違いは刺繍の魅力|通常の刺繍から3D、サガラ刺繍までにまとめました。
判断に迷ったとき、「どちらでもできますよ」としか言わない相手だと、選択の責任がこちらに残ります。それぞれの向き不向きを説明してくれるかどうかは、パートナー選びの判断材料になります。
数量とアイテムで最適解は変わる
50枚のTシャツと、500枚のTシャツでは適した方式が違います。素材がポリエステルか綿かでも変わる。
数量がまとまるなら版を使う方式のほうが単価は下がりますが、色数が多いと版代が積み上がります。「たくさん作れば安い」は、条件次第で成り立たない。大量注文時のコスト設計はシルクスクリーンプリントのコストを抑える制作のコツで扱っています。
方式ごとの違いはプリント手法の徹底比較ガイドにまとめていますが、実務では「この条件ならこれ」と提案してもらえるほうが早いはずです。
仕様の相談を前工程でできるか
デザインが完成してから「この線の細さでは刺繍にできません」と言われると、手戻りが発生します。
企画段階で相談できる相手だと、作れる形でデザインを設計できる。入稿前に確認すべきことは入稿データの作り方ガイドにまとめました。
発送・検品まで含めて設計する
見落とされやすいのが、完成後の工程です。ここを自社で抱えると、想像以上に人手を取られます。
個別配送が発生する事業形態か
まとめて1箇所に納品するのか、購入者一人ひとりに送るのか。この違いは運用負荷にとって決定的です。
ECで販売するなら、当然1件ずつの発送になります。グッズが売れるほど、梱包と発送の作業が増える。売上が伸びて嬉しいはずが、現場は疲弊していく。
検品・仕分けの負荷
数百枚のウェアを、サイズごと・色ごとに仕分ける。プリントの不良がないか1枚ずつ確認する。
この作業は単純ですが、時間と場所を取ります。オフィスの会議室が段ボールで埋まる、という光景は珍しくありません。
保管場所の問題も無視できません。納品されたものを置く場所がないという理由で、小分けに発注して単価が上がるケースもあります。まとめて作ったほうが安いと分かっていても、置き場所がなければ選べない。
繁忙期が本業と重なると、さらに厳しくなります。イベントシーズンは本業も忙しい。その時期に検品と発送が集中する構造なら、外部に出す前提で設計しておくべきです。
どこまでを外に出すかを決める
生産だけを外注するのか、検品・仕分け・発送まで含めて任せるのか。ここを最初に決めておくと、体制の設計がぶれません。
BESTPLAY では、生産から検品・仕分け・個別配送までを一貫して引き受けています。企画と販売に集中できる状態をつくるのが目的です。
まとめ|「作って終わり」ではない体制を先に作る
ウェア・グッズ事業でつまずく原因は、作る工程ではなくその前後の管理と手配にあります。
品目 × カラー × サイズの掛け算で負荷は増え、追加注文のたびに仕様確認が発生し、やがて担当者しか分からない業務になっていく。この流れは、事業が順調に伸びるほど早く訪れます。
対策の順番はシンプルです。まず過去の仕様をデータとして残すこと。次に、加工の判断を相談できる相手を持つこと。そして、検品・発送まで含めてどこまで外に出すかを決めること。
BESTPLAY は1978年創業、京都の自社工場でウェア・グッズの生産から検品・個別配送までを一貫して行っています。対応している加工の種類と設備は対応可能加工に掲載しています。
現在の運用課題を整理したい段階でも構いません。お問い合わせの種別で「まずは情報収集がしたい」を選んでいただければ、体制のご相談から承ります(2営業日以内に返信)。
