グッズを売る側に回った瞬間、いちばん最初に悩むのが値付けです。
「このTシャツ、いくらで売ればいいんだろう」。原価がわからないと決めようがない。かといって適当に決めると、売れたのに手元に残らないという事態になります。
原価は感覚ではなく、積み上げ計算で出せます。項目さえわかっていれば、電卓ひとつで把握できるもの。
この記事では、原価に含まれる費目、Tシャツとアクリルグッズそれぞれの内訳、そして値付けの逆算方法をまとめました。買う側の相場感を知りたい方はオリジナルグッズの費用はいくら?のほうが近いと思います。
グッズの原価は何で決まる?
原価は「ボディ代+プリント代+副資材+送料」の積み上げです。この4つを数量で割ると、1個あたりの原価が出ます。
多くの人が見落とすのが3つ目と4つ目。ここを計算に入れ忘れると、あとで利益が消えます。
原価に含まれる4つの費目
- ボディ代 Tシャツやトートバッグなど、プリントする前の商品そのものの価格
- プリント代 加工の費用。方式・色数・プリント箇所で変わる
- 副資材費 個包装の袋、台紙、タグ、値札など
- 送料・輸送費 工場から手元まで、さらに会場までの配送
副資材は1個あたりで見ると小さな額ですが、数百個になるとまとまった金額になります。「袋に入れて売る」つもりなら、その袋代も原価です。
数量で単価が変わる理由
プリントには、数量に関係なくかかる「固定費」があります。シルクスクリーンの版代がその代表。
版代が1万円だとして、10枚作れば1枚あたり1,000円が乗りますが、100枚なら100円。同じ版代でも、枚数で1枚あたりの重みがまるで違うわけです。
だから「何個作るか」を決めないと、原価は計算できません。逆に言えば、数量さえ決まれば見積もりは取れます。
「原価」と「販売価格」は別物
原価がわかったら、そこに利益を乗せて販売価格を決めます。原価の何倍にするかは、売る場面によって変わる。
ここで言う原価は、あくまで「モノを作るのにかかった費用」。デザインを外注したなら、そのデザイン費も本来は回収すべきコストです。何個で回収するかを決めて、1個あたりに割り振っておくと計算が合います。
デザインを人に頼む場合の費用感はグッズデザイン制作の費用相場ガイドにまとめました。
このあたりは後半の「値付け」の章で詳しく扱います。
Tシャツの原価はどう積み上がる?
ボディ代とプリント代が主。この2つで原価の大半が決まります。
ボディ代|ブランドとグレードで幅がある
同じTシャツでも、生地の厚み(オンス)やブランドによって価格帯が違います。薄手のものと厚手のヘビーウェイトでは、仕入れ値が変わる。
イベント物販で長く着てもらいたいなら厚手、配布用で単価を抑えたいなら薄手、という判断になります。素材ごとの違いはオリジナルTシャツ素材の完全ガイドにまとめました。
サイズ展開を増やすと、それぞれのサイズで在庫を持つことになります。サイズを4展開にすると、同じ100枚でも1サイズあたり25枚。売れ残りのリスクが分散するぶん、読みも難しくなります。
プリント代|方式・色数・箇所で変わる
前面だけか、背面も入れるか。1色か、フルカラーか。ここでプリント代は大きく動きます。
- 色数 シルクスクリーンは色ごとに版が必要
- プリント箇所 前後2箇所は、片面のみのおよそ2倍の工程
- 生地の色 濃色に淡い色を乗せるなら、白の下地が1工程増える
方式ごとの向き不向きはプリント手法の徹底比較ガイドで比べられます。
見落としやすい付帯費用
個包装の袋、サイズ表示のタグ、値札。それから会場までの送料。
「原価はTシャツ代とプリント代だけ」と考えていると、実際の手残りは想定より少なくなります。最初の計算に入れておいてください。
サンプル代も忘れがちです。本番前に1枚試作するなら、その費用も原価の一部。試作を省いて本番で失敗するほうが、はるかに高くつきます。
イベント当日の交通費や、什器の費用まで含めるかどうかは考え方次第。ただ、少なくとも「モノが手元に届くまで」にかかる費用は原価として把握しておくべきです。
アクリルグッズの原価の考え方
アクリルキーホルダーやスタンドは、UV印刷とカット費用が中心です。Tシャツとは費用の構造が違います。
サイズと厚みで変わる
アクリル板は面積で材料の費用が決まります。大きいほど、厚いほど高くなる。
アクリルスタンドは本体と台座がセットになるので、キーホルダーより工程が増えます。同じ絵柄でも、キーホルダーとスタンドでは原価が変わると考えてください。
カットの複雑さも影響する
キャラクターの輪郭に沿って切り抜く「フルカット」は、四角く切るより手間がかかります。細かい突起があるデザインは、強度の問題で形の調整が必要になることも。
データを作る前に、どこまで切り抜くかを決めておくと、あとの修正が減ります。
小ロットでも作りやすい
UV印刷は版が不要なので、1個から作れます。少量で試して、反応を見てから追加する進め方もできる。
ただし1個あたりの単価は、まとめて作るより高くなります。版代のような固定費がない代わりに、数量による割引の幅も小さい。「少なくても作れる」と「少なく作ると安い」は別の話です。
台座やチャーム、パッケージといった副資材の単価も、少量では下がりにくい。試作なら1個、本番はまとめて、という使い分けが現実的でしょう。
在庫を持ちたくない場合の選択肢はオリジナルグッズは1個から作れる?で解説しています。
値付けはどう決める?
原価率から逆算するのが基本です。「原価 ÷ 想定原価率」で販売価格の目安が出ます。
原価率から逆算する
たとえば原価率を40%に設定するなら、原価を0.4で割った金額が販売価格になります。原価1,200円なら3,000円。
原価率をいくつにするかは、売る場面と手間によって変わります。会場で手売りするのか、通販で発送作業が発生するのか。発送の手間がかかるほど、その分を価格に織り込む必要があります。
イベントの価格帯に合わせる
理屈で出した金額が、その場の相場から大きく外れていないかも確認してください。
同人イベントやライブ物販には、なんとなくの価格帯があります。Tシャツはこのくらい、缶バッジはこのくらい、という感覚。ここから大きく外れると、理由の説明が必要になります。
高い場合は「なぜこの値段なのか」を伝えられるようにしておく。素材にこだわった、加工に手間をかけた。根拠があれば納得してもらえます。
逆に安すぎるのも考えものです。相場より極端に低い価格は、品質への不安につながることがあります。適正に作ったものを、適正な価格で。ここは自信を持っていい部分です。
現金でのやりとりが発生するなら、釣り銭の準備も必要。100円単位で切りのいい価格にしておくと、当日の会計がスムーズになります。
送料と手数料を忘れない
通販ならプラットフォームの販売手数料、決済手数料、梱包材、送料がかかります。これらは原価に含めて考えるべきコスト。
売上から引かれるものを全部書き出してから、手元に残る額を確認してください。販売価格の1割前後が手数料で消えるケースは珍しくありません。
送料を購入者負担にするか、商品価格に含めるか。この判断も先に決めておくと、あとで価格を変えずに済みます。送料込みにするなら、いちばん遠い地域に送る場合を想定しておくのが安全です。
在庫リスクを抑える作り方
最初から大量に作らないこと。これに尽きます。
小ロットで試してから増やす
初回は少なめに作って、反応を見てから追加発注する。この進め方なら、売れ残りのダメージを最小限にできます。
追加を見込んでいるなら、発注時に伝えておくと版を保管してもらえる場合があります。2回目の製版費が浮くこともあるので、確認する価値はあります。
種類を絞る
アイテムを5種類作るより、2種類に絞って数を確保するほうが、在庫管理は楽です。
私たちが相談を受けるときも、初回は種類を絞ることをおすすめしています。売れ筋がわからない段階で手を広げると、動かない在庫が残りやすいためです。
種類を増やすなら、価格帯が重ならないようにするのがコツ。同じ2,000円台のアイテムを3種類並べても、買う人はどれか1つを選ぶだけです。
余ったときの出口を先に考えておく
在庫が残る前提で、次の使い道を決めておくと気持ちが楽になります。
次回のイベントに持ち越す、通販に回す、ノベルティとして配る。出口が用意されていれば、多少残っても損失ではなく在庫として扱えます。
逆に、日付やイベント名が入ったデザインは持ち越せません。刷り込む情報を「年号なし」「イベント名なし」にしておくだけで、在庫の寿命は大きく延びます。
サイズ展開のあるアパレルは、残るサイズに偏りが出ます。過去の実績がないなら、M・Lを厚めにして両端を絞るのが無難な配分です。
まとめ|積み上げて計算すれば値付けは迷わない
グッズの原価はボディ代+プリント代+副資材+送料の積み上げで決まります。副資材と送料を忘れないことが、手残りを確保する第一歩。
数量によって1個あたりの原価は変わるので、「何個作るか」を先に決めてください。そのうえで原価率から逆算すれば、販売価格の目安が出ます。
初回は小ロット・少種類で試す。売れ筋が見えてから広げるのが、在庫リスクを抑える現実的なやり方です。
実際の金額は、アイテム・加工方法・数量・色数の組み合わせで変わります。お問い合わせで「依頼検討しており、見積もりが欲しい」を選ぶと、条件をもとにお見積もりをお出しします(無料・2営業日以内に返信)。
加工ごとの選択肢と保有設備は対応可能加工にまとめています。
