受注生産の価格設定|数量が読めないときの値付けと赤字を防ぐ考え方

受注生産でいちばん頭を悩ませるのが、販売価格の決め方です。

在庫販売なら、作る数を決めてから原価を出せます。ところが受注生産は、受付が終わるまで何個作るのかわかりません。30個なのか、100個なのか。数量で1個あたりの原価が変わるのに、その数量が決まっていない。

この「順番のねじれ」が、受注生産の値付けを難しくしています。受注生産そのものの仕組みは受注生産グッズとは?で解説しています。

とはいえ、考え方さえ押さえておけば怖いものではありません。この記事では、数量が読めない状態でも赤字を出さない価格の決め方を、計算の流れと一緒に整理しました。

受注生産の価格はなぜ決めにくい?

数量によって1個あたりの原価が変わるのに、価格を決める時点では数量がわからないからです。とくに版代などの固定費がある加工では、この差が大きくなります。

固定費と変動費に分けて考える

グッズの製造費は、数量に関係なくかかる「固定費」と、1個ごとにかかる「変動費」に分けられます。

費用の種類 例 数量が増えると
固定費 版代、刺繍データ作成費、デザイン費、サンプル代 1個あたりの負担が下がる
変動費 ボディ代、1枚ごとの加工費、個包装、送料 1個あたりはほぼ変わらない

受注生産の価格で気をつけるべきなのは、固定費のほう。固定費が大きいほど、数量による単価の差が開きます。

加工方法で「数量の影響」が違う

シルクスクリーンのように版を作る方式は、固定費の割合が大きくなります。まとまった数量なら1枚あたりが安くなる一方、少ないと割高です。仕組みはシルクスクリーンのメリットとコストを抑えるコツで解説しています。

反対に、DTFプリントのように版がいらない方式は、固定費が小さいぶん数量の影響を受けにくい。受注生産で数量が読めないときには、こうした方式のほうが価格を決めやすくなります。

DTFの特徴はDTFプリントが小ロット制作の悩みを解決する理由にまとめています。

「最悪の数量」で考えるのが基本

価格を決めるときは、いちばん少なく集まった場合を想定します。多く集まった場合で計算すると、少なかったときに赤字になるからです。

「たぶん100個くらい売れるだろう」という期待で価格を決めるのは、受注生産でもっとも多い失敗です。想定の下限で黒字になる価格を、まず出してください。

赤字を出さない価格の出し方

数量ごとの単価を先に出し、想定の下限数量でも利益が残る価格を設定します。手順にすると4つのステップです。

Step1 数量別の見積もりを取る

工場に「30個」「50個」「100個」のように、複数の数量で見積もりを依頼します。

どこで単価が大きく下がるのか、その境目がわかると価格設定の判断がしやすくなります。見積もりの取り方や比べ方は見積もり比較のコツで詳しく扱っています。

加工方法を複数の候補で比べるのもおすすめです。数量が少ない場合と多い場合で、向いている方式が入れ替わることもあります。

見積もりを依頼するときは、アイテム名・カラー・サイズの内訳見込み・プリント箇所・色数を伝えます。条件がそろっていると、複数の数量でも比べやすい見積もりが返ってきます。

Step2 固定費を下限数量で割る

たとえば、固定費が合計20,000円、想定の下限が40個だとします。

20,000円 ÷ 40個 = 1個あたり500円。これに変動費を足したものが、下限数量のときの原価です。変動費が1,500円なら、原価は2,000円になります。

固定費は「最低これだけ売れる」数で割る。これが赤字を防ぐいちばんの基本です。

Step3 手数料と利益を乗せて価格を決める

ネット販売なら、販売プラットフォームの手数料や決済手数料がかかります。梱包材と送料も忘れずに足してください。原価の積み上げ方はグッズの原価と値付けの基本で詳しく解説しています。

そのうえで利益を乗せます。原価率を40%にするなら、原価を0.4で割った金額が販売価格の目安です。

先ほどの例で、原価2,000円、手数料と送料で1個あたり500円かかるとすると、合計2,500円。これを0.4で割ると6,250円になります。キリのいい6,300円や6,500円に調整するのが一般的です。

計算した価格が相場から大きく外れていないかも確認しましょう。高く見える場合は、素材や加工の理由を販売ページで伝えると納得してもらいやすくなります。

最低数量はどう決める?

最低数量は、固定費を回収できる数と、工場の最小ロットのどちらか大きいほうに合わせます。集まらなかった場合の対応も、受付前に決めて告知しておきます。

固定費を回収できるラインを出す

販売価格が決まったら、「何個売れば固定費を回収できるか」を計算します。これが損益分岐点です。

先ほどの例なら、販売価格6,300円から変動費1,500円と手数料・送料500円を引いた4,300円が、1個売れるごとに固定費の回収に回ります。固定費20,000円を4,300円で割ると約4.7。つまり5個売れれば、固定費は回収できる計算です。

ただし、これは「損をしない」ための最低ラインにすぎません。デザインにかけた時間や、告知・発送の手間まで考えると、損益分岐点ぎりぎりでは割に合わないことが多いはずです。自分の作業時間にも見合う数を、最低数量の目安にしてください。

工場の最小ロットも確認する

加工方法やアイテムによっては、工場側に最小ロットが設定されていることがあります。刺繍やシルクスクリーンは、方式の性質上、ある程度の数量がないと割高になりやすい加工です。

BESTPLAYでは小ロットからご相談を受けていますが、最小ロットと単価の関係は加工方法で変わるので、見積もりの段階で確認しておくと安心です。

集まらなかったときの対応を告知する

最低数量に届かなかった場合、どうするかを先に決めておきます。

  • 製造を中止して全額返金する
  • 価格を据え置いたまま製造する(差額は自分で負担)
  • 受付期間を延長する

いずれにしても、受付開始時に告知しておくのがマナーです。後から条件を変えると、信頼を損ねてしまいます。

数量によって価格を変えてもいい?

変えることはできますが、お客様にとってわかりやすいかどうかを優先してください。基本は一律価格で、数量が多く集まった場合の差額は次回に還元するほうが、トラブルになりにくい方法です。

一律価格がもっともシンプル

受付期間中に価格が変わると、「先に買った人が損をした」と感じさせてしまいます。一度決めた価格は、受付期間中は変えないのが原則です。

多く集まって単価が下がった分は、自分の利益として次の企画の資金にする。これも立派な使い道です。

次回の受注生産で価格を下げたり、おまけを付けたりして還元する方法もあります。「前回たくさん集まったから今回はこの価格にできた」と伝えられれば、応援してくれた人にも気持ちが届きます。

早期割引やセット割で工夫する

どうしても価格で差をつけたいなら、最初から条件を明示した割引にします。

「受付開始から3日間は早期割引」「2点セットで割引」のように、ルールが先に見えていれば不公平感は生まれません。

とくにセット割は注文数を増やしやすく、結果として1個あたりの原価を下げる効果もあります。

目標達成で特典を追加する

「100個集まったら全員にステッカーをプレゼント」のように、数量の目標に特典を連動させる方法もあります。

価格を下げずに、集まった数を還元できるのがポイント。注文した人が自分で告知を広めてくれるきっかけにもなります。

受注生産の価格設定でよくある失敗は?

多いのは、見えにくいコストの計上漏れと、受付後の値上げです。どちらも準備段階で防げるので、受付前にもう一度見直してください。

サンプル代や送料を入れ忘れる

原価の計算で抜けやすいのが、サンプル代と、工場から手元までの送料です。

サンプルは販売ページの撮影に使うため、受注生産では欠かせません。1回きりの費用なので、固定費として下限数量で割っておきます。工場から自宅へ、自宅からお客様へと2回配送が発生する場合は、その両方を原価に含めてください。

「一度しか払わない費用」ほど、計算から漏れやすいと覚えておくと安心です。

受付後に価格を上げてしまう

計算ミスに受付開始後に気づいて、途中で値上げする。これはいちばん避けたいパターンです。

すでに注文した人との不公平が生まれますし、「またあとから変わるかも」という印象を残します。

価格は受付開始前にもう一度だけ計算し直し、公開後は変えないと決めておきましょう。

どうしても赤字になるとわかった場合は、その回は利益を諦めて、次回の価格に反映するほうが傷は浅く済みます。

自分の作業時間をゼロで計算する

個人の受注生産でよくあるのが、告知や発送にかける自分の時間を費用として見ていないケースです。

100件の発送作業に丸一日かかるなら、それも立派なコスト。作業を外部に任せる場合の費用と比べると、自分の時間の重みが見えてきます。

長く続けるつもりなら、自分の手間にも値段をつけておくことをおすすめします。

まとめ|下限の数量で黒字になる価格から決める

受注生産の価格設定は、数量が確定しない中で決めるのが難しいところです。けれど、固定費と変動費を分け、想定の下限数量で黒字になる価格から考えれば、赤字は防げます。

数量別の見積もりを取り、損益分岐点を出し、最低数量と集まらなかったときの対応を決めておく。この順番で準備すれば、受付開始後に慌てることはありません。

実際の単価は、アイテム・加工方法・数量・色数の組み合わせで変わります。お問い合わせで「依頼検討しており、見積もりが欲しい」を選べば、複数の数量での見積もりにも対応します(無料・2営業日以内に返信)。数量の影響を受けにくい加工方法は対応可能加工で比較できます。

BESTPLAY

この記事の監修

有限会社BESTPLAY

1978年創業。マーキング加工のプロフェッショナルとして、シルクスクリーン印刷・刺繍・DTF・インクジェットなど多彩なプリント技法で、スポーツウェア・イベントグッズ・オリジナル商品の制作を手がけています。

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