プリント手法

サガラ刺繍とは?もこもこした質感が生まれる仕組みと3D刺繍の違い

ヴィンテージのスウェットや、子ども服のワンポイント。あの「もこもこ」した刺繍を見て、名前が分からずに調べた方も多いのではないでしょうか。

あれがサガラ刺繍です。相良刺繍とも書きます。

プリントでは絶対に出せない立体感と手触りがあって、実物を触るとだいたいみなさん「おおっ」と声が出ます。この記事では、サガラ刺繍がどういう仕組みでできているのか、通常の刺繍や3D刺繍と何が違うのか、そしてどんなアイテムに向いているのかを整理します。

サガラ刺繍とは?糸をループ状に積み上げる刺繍技法

糸をループ状に積み上げていく刺繍技法のことです。タオルの表面に近い、ふんわりした立体感が生まれます。

平面に糸を並べる通常の刺繍とは、針の動かし方からして違います。

かぎ針で糸をすくい上げる技法

サガラ刺繍は、かぎ状の針で糸をすくい上げ、輪っかを作りながら生地に留めていきます。この輪っかが密集することで、あの独特のボリュームが出ます。

英語ではチェーンステッチの一種として扱われることもありますが、日本では「サガラ」「相良」の呼び名が定着しています。ループの高さや密度を変えると、こんもり盛り上げることも、控えめに整えることもできます。

この高さの調整が、仕上がりの印象をかなり左右します。低めに抑えると上品にまとまり、高く積むとカジュアルで元気な雰囲気に。同じ絵柄でも別物に見えるので、参考にしたい写真があれば最初に見せてもらえると話が早いです。

サガラ刺繍と通常の刺繍の違い

通常の刺繍は、糸を平らに敷き詰めて面を作ります。表面はつるっとしていて、光沢が出る。文字やロゴの輪郭をシャープに出すのが得意です。

対してサガラ刺繍は、光を吸収するので発色がやわらかく、輪郭も少しぼやけます。この「くっきりしない」ところが、逆にあたたかみとして働きます。

どちらが上ということはなく、狙う印象で選び分けるものです。刺繍全体の技法については刺繍の技法と選び方にまとめています。

手に取ったときの印象が変わる

サガラ刺繍の価値は、写真だと半分も伝わりません。指で押すとふかっと沈み、離すと戻る。この感触が「ちゃんとしたものだ」という印象につながります。

物販グッズやギフトで選ばれるのは、この理由が大きいです。ネットの写真で決めた人が、届いてから満足度が上がるタイプの加工と言えます。

一方で、通販で売る商品としては説明が難しい加工でもあります。写真だけだと通常の刺繍との差が伝わりにくいので、商品ページには接写や、指で触っているカットを入れておくと反応が変わります。

サガラ刺繍はどんなアイテムに向いている?

生地に厚みがあって、面積をとれるアイテムが向いています。スウェット、パーカー、バッグ類が代表格です。

逆に、薄い生地や小さすぎる面には向きません。

スウェット・パーカーとの相性

一番よく使われる組み合わせです。胸元に大きめのロゴやレターを入れると、いわゆるカレッジ風の雰囲気が出ます。

生地に厚みがあるので、刺繍の重みを受け止められる。裏起毛の生地でも問題なく入ります。パーカーの生地の選び方はTシャツ素材とオンスの考え方の内容がそのまま応用できます。

ポーチ・バッグなどの布小物

面全体をサガラ刺繍で埋めると、雑貨としての存在感が一気に上がります。小さいアイテムほど、加工の密度が効いてきます。

キャンバス地のトートやポーチは土台がしっかりしているので、大きめの絵柄も安定します。

ただし、バッグの底に近い位置や、マチの折り返し部分は避けてください。使っているうちに擦れる場所なので、ループが引っかかって毛羽立ちの原因になります。

ワッペンにするという選択肢

ウェアに直接刺すのではなく、いったんワッペンとして作ってから貼り付ける方法もあります。

これには利点が3つあります。

  1. 薄い生地にも載せられる … 土台を別に用意するので、生地の制約から自由になる
  2. 技法を組み合わせられる … 外枠は通常刺繍、中身はサガラ、といった作り分けができる
  3. 在庫を分けられる … ワッペンだけ先に作り、注文が入ってからウェアに貼る運用ができる

複数アイテムに同じロゴを展開したい場合は、ワッペン化を検討する価値があります。

取り付け方は熱プレスと縫い付けの2通り。熱プレスは早くてきれいですが、洗濯を繰り返すと端から浮いてくることがあります。長く使うユニフォームや、業務で毎日洗うウェアなら、縫い付けのほうが安心です。

サガラ刺繍と3D刺繍の違いは?

盛り上げ方の仕組みが違います。サガラ刺繍は糸のループで、3D刺繍は下に敷いたスポンジで持ち上げます。

見た目の印象も、向いているアイテムも別物です。

3D刺繍はスポンジで持ち上げる

3D刺繍は、生地と糸のあいだに専用のウレタンシートを挟み、その上から糸をかぶせて縫います。

出来上がると、ロゴが数ミリくっきり浮き上がる。キャップの正面によくあるアレです。輪郭がシャープに立つので、ブランドロゴのような「かっちり見せたい」デザインに向いています。

質感と用途で選び分ける

サガラがやわらかく丸い印象なら、3Dは硬くシャープな印象。同じ「立体」でも方向が真逆です。

キャップやアウターの厚手素材には3D、スウェットや布小物にはサガラ。おおむねこの棲み分けになります。

両方を1つのデザインに入れることもできます。外枠を3Dで立ち上げ、中をサガラで埋める。手間はかかりますが、他では見ない仕上がりになります。

3方式を表で比べる

技法 手触り 得意なこと 相性の良いアイテム
サガラ刺繍 もこもこ・やわらかい ボリュームと温かみ スウェット、ポーチ、ワッペン
3D刺繍 かっちり・立体的 ロゴを数ミリ浮かせる キャップ、厚手アウター
通常刺繍 つるつる・光沢 細い文字やロゴを精密に ポロシャツ、シャツ、小物

プリントも含めた全体の比較はプリント手法の比較ガイドを見てみてください。

デザインするときに気をつけること

細部が潰れやすい、というのが最大の注意点です。ループに厚みがあるぶん、細かい表現は成立しません。

先に知っておけば、デザイン段階で回避できます。

細い線と小さい文字は避ける

サガラ刺繍は、糸の輪っかが物理的な幅を持ちます。線が細すぎると、隣のループとくっついて溝が消えてしまう。

目安として、線幅3ミリ以下や、5ミリ以下の小さな文字は再現できないと考えてください。どうしても入れたい細部があるなら、その部分だけ通常刺繍にする組み合わせが現実的です。

文字を入れるなら、細い明朝体より太いゴシック体のほうが向いています。線の太さが均一なので、ループが並んだときに読みやすさが保てます。

生地は厚みのあるものを選ぶ

ループを積み上げるぶん、糸の総量は通常刺繍より増えます。重さが出るので、薄い生地だと引っ張られてシワが寄ります。

薄手のTシャツに大きなサガラ刺繍を入れたい、という相談は何度か受けましたが、たいていは生地を変えるか、ワッペンにする提案に落ち着きます。以前、薄手のカットソーで試作したときは、洗濯後に刺繍まわりが波打ってしまいました。生地選びは想像以上に効いてきます。

色は糸の光沢で見え方が変わる

刺繍糸には独特の光沢があります。画面で見た色と、糸になったときの色は同じになりません。

サガラ刺繍はループが影を作るので、平らな刺繍よりさらに深く沈んで見えます。淡い色を選ぶと、思ったより締まらないことがある。色を重視するなら、糸の見本で確認するのが確実です。

生地の色との組み合わせも見ておいてください。同系色でまとめると、質感だけで見せる落ち着いた仕上がりに。コントラストを強くすると、遠くからでもロゴが読める見せ方になります。狙いによって選ぶ色が変わります。

発注前に決めておくと早いこと

アイテム・配置・サイズの3つです。この3点が決まっていれば、その場で可否の判断ができます。

逆に、ここが曖昧だと見積もりが出せません。

アイテムと配置を先に決める

何に、どこへ入れるか。胸なのか背中なのか、袖なのか。

配置によって使える刺繍機の枠が変わるため、同じデザインでも配置しだいで対応可否が変わります。脇の縫い目に近い位置などは、物理的に枠がはまらないこともあります。

サイズと面積の見当をつける

サガラ刺繍は面積が広いほど糸を使い、加工時間も伸びます。胸のワンポイントなのか、背中いっぱいなのかで話がまったく変わる。

正確な寸法でなくてかまいません。「だいたい手のひらくらい」でも十分に伝わります。

面積が読めると、おおよその単価と納期もその場でお伝えできます。刺繍は縫う時間がそのままコストになるので、面積を1割減らすだけで金額が変わることも珍しくありません。

データはラフでも相談できる

完成データがなくても大丈夫です。手描きのラフや、参考にしたい写真でも判断はできます。

入稿データの形式については入稿データの作り方にまとめていますが、相談の段階ではそこまで整っていなくて問題ありません。

BESTPLAYでは京都の自社工場で、サガラ刺繍・3D刺繍を含む10種類の加工に対応しています。対応素材や設備は対応可能加工に一覧で掲載しています。

まとめ

サガラ刺繍は、糸をループ状に積み上げてもこもこした質感を作る技法です。通常刺繍のつるっとした光沢とも、3D刺繍のかっちりした立体感とも違う、やわらかい存在感が持ち味。

向いているのは、スウェットやパーカー、キャンバス地の布小物など、厚みのあるアイテムです。細い線や小さな文字は潰れるので、デザインは太めに、シンプルにまとめるのが成功の条件になります。

デザインがラフの段階でも構いません。お問い合わせでは種別に「〇〇の加工について相談したい」「まずは情報収集がしたい」を選べます。絵柄とアイテムを見せていただければ、サガラで成立するか、別の技法と組み合わせたほうがいいかをお答えします(2営業日以内に返信)。

BESTPLAY

この記事の監修

有限会社BESTPLAY

1978年創業。マーキング加工のプロフェッショナルとして、シルクスクリーン印刷・刺繍・DTF・インクジェットなど多彩なプリント技法で、スポーツウェア・イベントグッズ・オリジナル商品の制作を手がけています。

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